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ブライトン ミラクル(2019年)

ラグビー、2019年10月13日の予選突破の礎。ブライトン・ミラクルは、その2015年、南アフリカ戦勝利を生むまでの苦しい軌跡を描いている。

サクラのエンブレムを左胸につけた「ブレイブ・ブロッサムズ」(BRAVE BLOSSOMS)日本ラグビーチーム、ここ開催国日本でついに悲願のベスト8出場だ。

最後まで、目が離せないスコットランドの試合。試合開始早々スコットランドに先制トライを取られ、劣性かと思われた中、福岡のミラクルなパスから松島のトライ。続けて、9年間代表で、なんと初めてトライを稲垣がする。その後、福岡の2トライで前半終了。後半早々、またも福岡のトライ。28対7。これで勝負ありかと思ったが、やはりスコットランドの底力。これは、余裕かと思った矢先、後半9分、15分とスコットランドの連続トライ。28対21。4トライ取っているので負けても7点差であれば決勝トーナメント進出。しかし、チャンスと劣性の攻防。時間が刻々と経過する。あと30秒。日本ボールを必死でキープ。ノーサイド。予選リーグ4連勝、一位通過。決勝トーナメントは南アフリカ戦。

2019年 スコットランド勝利後(朝日新聞)

にわかラグビーファンの一人であるが、この悲願は、もちろん前回のブライトンがあっての更なる努力の積み上げによることは明白である。

ブライトンとは、2015年のラグビーワールドカップ開催地。この作品「ブライトン・ミラクル」は、そう今から4年前、1987年第一回ワールドカップから連続出場にも関わらず、24戦1勝、出場国の中で一番弱かった日本(13位)が、世界ランク3位の南アフリカに勝つまでのストーリーを、俳優と本人のインタビュで構成されたものである。

エディー・ジョーンズ

話は、2011年の大会で負けて間もなく、2012年エディー・ジョーンズの監督就任から始まる。記者会見でも「ひどいパフォーマンスだ、勝つ気が全くない。」と感想を述べる。エディーは、廣瀬をキャプテンに据えたが、試合を重ねていくが、決定的に日本の実力不足に悩む。エディーは、体格の劣勢を練習量(運動量)でカバーするために、非常に厳しい練習を課す。2015年の初戦が、南アプリかと決まったとき、エディーは、「非常にうれしい、胸が高まる」とコメント。キャプテンを廣瀬から、日本人の視点ではないリーチ・マイケルに変更。更なる厳しい練習を課すため、選手たちの心は、エディーから離れていく。そこを、リーチがカバーする毎日。ところが、リーチは、試合で足が折れる負傷。その後、エディーは脳梗塞で倒れ、2人して、自ら厳しいリハビリー課し、それを乗り越える。

エディーは、日系アメリカ人の母とオーストラリア人の父を持ち、オーストラリアで育つ。母は、戦後、収容所に居た辛い経験をもつが人を悪く言わない。日系の妻を持つ父は蔑まされるが、人を悪く言わない。エディーも辛い思いをするが、母からの「怖い時、目をつぶり、家族のことを思い、ベストな成果をイメージし、笑顔を作って目を開ける」の言葉を胸に、また父からは、「自分の信じる道を、ゆっくり、時間をかける」を胸に生きてきた。

選手たちは、「エディーに会って初めてハードワークを知った、それは、別の次元へ引き上げる」と思うようになる。エディーは、リハビリから復帰すると、「南アフリカを破って歴史を創る」と言い、1マイル4分を世界で初めて切ったロジャー・バニスターの話をし、目標と場所、時間を設定し、努力を積み上げることの大切さを伝える。「9月19日ブライトン イングランド」と目標を立てる。そこから、休みなしの地獄のような練習が選手たちに課せられる。挫折する選手たちにエディーは言う、「南アフリカと戦うのは自分ではない、相手は手加減しない。責任を持てない奴ほど言い訳をする」。

ワールドカップ5日前、エディーの父が亡くなる。父からのメッセージを母らから聞く。「任務から離れるな、自分の任務を全うしなさい」。エディーは、大会に向かう選手たちに、「人の記憶に残る人生を送りなさい、今の時間を大切に。」と鼻向けの言葉を贈る。前日、リーチに、「仲間とサポーターのために戦え」と伝える。

いよいよ大会当日、グランドに出る前に「絶対に離されるな、好きにさせるな、全てを出し尽くせ、そうすれば勝てる、ジャパン・ウェイだ」と発破をかける。

五郎丸のペナルティキック 3-0。南アフリカのトライ 3-7。日本のトライ、コンバージョンキック 10-7。南アフリカのトライ 10-12。ハーフタイムで、エディーは、「勝利は、君たちのためにある、君たちの家族のためにある、皆を悲しませるな、歴史を創るまであと40分、もう君らだけの事ではない、君たちは人々の希望を背負っている、獲ってこい」と後半のフィールドに送り出す。五郎丸もペナルティキック 13-12。南アフリカのトライ 13-19。16-19。19-19。19-22。22-22。南アフリカのトライ 22-29。日本のトライ 29-29。29-32。残り13秒 敵ゴールライン5m前 日本がキックで同点かトライを狙いスクラムか? エディーからのサインは、キック。しかし、リーチが選んだのは、スクラム。そこから日本のトライが生まれ、34-32 ノーサイド。日本の歴史的な勝利が生まれる。

2015年 南アフリカ戦勝利直後

しかし、その後の試合で3勝を収めるも勝ち点1に泣き、予選敗退となる。

五郎丸は言う、「諦めることは簡単、諦めて得るものは後悔しかない、チャレンジすると自分の中で湧き上がってくるものがある、感動というものを世の中に提供することができる、その感動とは、人の想像を超えること、それが、あの南アフリカ戦だった」、エディーは言う「リーチは正しい選択だった、あの瞬間腹が立ったが、尊重した。」リーチは言う「キックを外したら後悔する、なら挑戦してトライを狙う、歴史を創るために、人生で最大の決断だった」、エディーは言う「ワールドカップで一番感動したことは、南アフリカ戦の後のスコットランド戦を3000万人がTVで観戦したこと、たった1つのスポーツチームが国全体に希望を与えた、選手達は母国に大変な貢献をした、彼らは日本の誇りとしてずっと語り継がれていくだろう」。

そして、2019年10月13日、日本代表は更なる新しい歴史を創った。

Ohtani Hisao

1967年生まれ。高校卒業まで大阪→名古屋→福岡→島根で生活。今は、神奈川県逗子市に在中。都内の会社に勤め、同居は、妻と子供2人(2020年時点 大学生)。無理をしない程度に、読書、映画、美術鑑賞、スポーツを楽しんでいます。特に2019年春からSUP(Standup Paddle Surfin)に奮闘中です。ブログで奮闘ぶり更新中です。

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