イギリスの社会保障問題を題材とした第69回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞した作品。
59歳のダニエル・ブレイクが40年以上務めてきた大工を、心臓病のため休職しなくてはいけなくなった。そのため求職手当をもらおうとするが、医療診断で15点中12点しか得られず、受給が出来ない。
職安でたまたま出くわした、ロンドンからの引っ越しで、職安の場所が分からず遅刻し時間に間に合わなかったということで追い出された子供2人とシングルマザーのケイティ家族の心の支えになっていく。
ダニエルは、求職活動や再審査の手続きが、パソコンを使ったインターネット経由のため全く使い方が分からないため、エラーばかりに出くわし、ストレスをためていく。履歴書も手書きで、配布を始めるが、職安では、配布した証拠がないため対応ができないと突っ張られる。
一方、ケイティもフードバンクに通うことで生活を保ち続けていたが、子供の靴などを買ってあげられず、風俗に通い始める。それを止めるダニエルだが、それ以上は踏み込めない。
やっと、職安への対応処置を見出した矢先、事務所のトイレで心臓発作で帰らぬ人となる。そこで、彼のポケットに残されていた手紙の言葉。
「私は依頼人でも、顧客でも、ユーザーでもない。怠け者でも、たかり屋でも、物乞いでもない。国民保険番号でもなく、エラー音でもない。きちんと税金を払ってきたことに誇りを持っている。地位の高い人には媚を売らないが、隣人には手を貸す。施し要らない。私はダニエル・ブレイク。人間だ、犬ではない。当たり前の権利を要求する。敬意ある態度というものを。私はダニエル・ブレイク。一人の市民だ。それ以上でもそれ以下でもない。」
何らかの理由で職を追われた人、シングルマザーなど安定した収入を得られていない人々に対して、イギリスは様々な条件を越えない限り手当を与えない。イギリスだけではない話なのだと思う。住んでいる日本にも同じことがあるのかもしれない。せめて、正しい行いをしてきた人、している人に生活に困らない最低限のサポートをしてあげることが必要なのでしょう。人への優しさは記憶され、きっと世の中に還元されることにつながる気がする。