最低の軍師(蓑輪諒著)


もしかしたら、上杉謙信は、「義」を信じ北条を屈服させ、天下を取っていたかも、でも「義」がそこを邪魔をした話。

蓑輪諒氏の2作目「最低の軍師」。やはり面白い。「彼は本物だ」と思った。

話は、室町時代から戦国時代に移行しきった頃、印旛沼にほど近い下総の臼井城が舞台。北陸の上杉謙信が、室町幕府の将軍亡き足利義輝の義を信じ、北条家屈服のために関東に進軍。何度も、北条家に制圧された城を奪還しては、平定もせず元の城主にその城を戻し、雪の頃には北陸に戻っていくことを何度も繰り返していた。そういう中、北条家の一家臣「松田の鬼」「鬼孫太郎」と呼ばれる齢26歳の松田孫太郎が、北条家の命を受け、たった250人の兵を連れて臼井城に入り、命がけで臼井城を守るという話。

この臼井城に入る前に、道端で占い師(当時の軍師は占い師だったらしい)と自称する僧侶姿の身なりの汚い白井浄三入道と出くわす。それがとんでもない詐欺師なので孫太郎はその場から離れる。が、臼井城に入ると、城内は城主、原上総介胤貞共々、歓迎ムードはない。軍師を求められた孫太郎は、途中で出会った浄三を急仕立てで軍師にしてしまう。浄三も身金欲しさに協力するが、いつ逃げ出してもいいつもりでいる。そもそも口と知恵がそもそも立つので、相手はすっかり騙される。

そういう中、上杉家の軍師、長尾景虎が大軍を率いて臼井城にやってくる。浄三は、実は長尾氏の軍師、河田長親と顔見知り。お互いが才能を認め合う仲だが、表に出せない暗い事情がある。孫太郎は、浄三に事情を聴き、真に助けを求める。浄三は、突飛なアイディアで、長尾氏の出鼻をくじくが、7千人と2千250人の戦いなので限界がある。なかなか落ちない臼井城に業を煮やした上杉は、本隊を率いてやってくる。上杉軍1万2千人に膨れ上がり、城の周囲一面に敵兵が居る状況になった。そこで、投降するか死を覚悟で戦うかの選択を、孫太郎、浄三は、城主原氏に判断させる。以外にも「戦う」と判断が降りたとき、浄三は、大きな掛けに出る。猛攻を防ぐこと3,4日、ついにその日はやってくる。上杉軍、「和睦の申し入れ」し撤退。

その和睦の交渉の場で、河田氏と浄三氏は、顔を合わせる。交渉成立後、悔やむ河田氏からある真実を聞かされた浄三は、過去義輝の思いを知る。しかし、後悔はしていないと言い切る。身金欲しさに協力したが、松田孫太郎の脇差一本で十分という。孫太郎は、自分に仕えることを提案するが、コイントスで、一人旅立つことになる。その2年後、弟である足利義昭は、織田信長に奉じられ上洛を果たし、将軍就任を果たす。この後、戦国時代は、いくつかの大きな戦いを経て終焉を迎えていくという話。

いやー、本当に、話の展開が面白い、歴史の表に出ない人たちにフォーカスして、歴史の裏側で起きたことを知れただけでも非常に楽しかったです。

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