いまこそ知りたいAIビジネス(石角友愛)
AIは、特殊技術が今無くても、その気になればいつでもスキルとして体得できる。
著者である石角氏は、エンジニアでもなく、AIや機械学習を学びたいとも思わず、ただIT業界が好きでGoogle本社で働きたいと思いで、Googleに入社した。その後、グーグルショッピングの機械学習機能を作る分類器チームに配属になった。そこから、AIについて熱心に学び、自分のものにした。Google退職後、パロアルトインサイトを起業し、企業経営者や事業開発者とエンジニアの橋渡しをされている方とのこと。
他のAI関係の本に記載していることは、このブログでは触れず、ちょっと目を引いた内容を掻い摘んでみる。
- 中小企業ほどAIは必要。
- AI導入で業績が伸びる業種は全体の7割。
- どんなデータを集めるべきか、どんなラベル付けをするべきか、というところから、データサイエンティストと話しながらデータ収集をした方が効果的である。
- 持っているデータを検証しないことには課題解決に向けて適切なAIモデルを作ることはできない。提案書も見積もりも作れない。
- サンプルデータにラベル付け→ラベル間の差分(特徴量)を探す→特徴量を今後どのようなAI技術で解析、抽出し、課題解決につなげるかのプランつくり
- AIは導入することがゴールではなく定着させること。「定着の壁」。
- AIビジネスは、泥臭い作業の連続。現場で課題をきちんと把握すること。「導入の壁」
- 効果検証できるKPIの設定が必要。
- 新規ビジネスの場合、需要サイドと供給サイドをあらゆる手法で調査する。「環境スキャニング」
- 低価格でプロトタイプを作り、落としどころの確認をおこなう。
- 元データのバイアスを取り除くプロセスが非常に重要。
- GDPR(General Data Protection Regulation)を考慮したデータの整理とデータ収集方法の検討。世界的に遅れている日本に有利かもしれない。表に出せる機密データと表に出せるオープンデータの切り分け。
- 日本に圧倒的に少ない、データサイエンティストを育てることが必要。データサイエンティスト1人に対して、フルスタックやインフラに強いエンジニアが3~5人必要。
- AIビジネスデザイナーは、経営層とソフトウェアエンジニアやデータサイエンティストをつなぐ役割。データサイエンティスト10人に対してAIビジネスデザイナーは1人必要。日本は、特に少ない。
- イノベーションは、「Desirability(ユーザーニーズ)」、「Feasibility(技術性)」「Viability(ビジネス性)」が重なった領域。
- データを揃えているなら透明性のあるコンペで、最も良いAIモデル(アルゴリズム)を提供してくれた人に賞金を与えることもアメリカでは当たり前。
- 人間が行うと苦痛を伴う仕事をマシン(AI)に任せ、人間はよりクリエイティブな仕事をおこなう。AIは、省力化、均質化を目的とする。
- AIの社会を生き残れるタイプ。1)代替の効かない高度な技術「特化型」、2)高い技術、市場のニーズを把握し、色々な場所に適合できる「適応型(グレート・アダプター)」、3)異業種の人材をまとめて動かすコミュニケーション能力が高い「合成役(シンセサイザー)」(トーマス・フリードマン「フラット化する世界」より)
- AIバイリンガル(今あるものを組み合わせて、今までになかったものを生み出す力)を育てる。
- AIの時代に仕事が見つけられるかどうかは、今後の自分にどれだけ「リスキル」の投資ができるか。
- 会社がフォーカスすべきは、意欲はあるが情報が足りない層、英語で学ぶことに抵抗がある層である。
- 新しくキャリアを作りたい人は、何かをゼロから作ること、何かを体験してアウトプットすることが肝要。アウトプットがあれば何十倍、何千倍とスケールが可能。
- 最近アメリカで提唱されている新しい働き方の概念は「ワークライフインテグレーション(仕事と生活の統合)」限られた時間をいかに自分が納得して使えるか。
- 一番大切なこと、「自分が一番幸せに思う時間を見極める」
AIの概念、ビジネスの具体例、心得など包括的な内容で、非常に読みやすく良い本だと思います。手に取ってみてはいかがですか?
この記事へのコメント