フェアトレードのおかしな真実(コナー・ウッドマン著)
倫理的意識でフェアトレード認証ロゴ商品を買っても、現実の現場は想像を絶する過酷な労働環境であることに変わりはない、きちんと事実を知ることが大切
自分にとっては、小説でもなく、啓蒙、イノベーション的なビジネス書でもない社会的な本で手に取ることは珍しい。
この本は、ある意味耳の痛い世界で起きている事実の話である。先進国の人、大企業の人が恩恵を得ている裏側にある貧しい国の人たちの苦しみのリポである。ここ15年くらい「倫理的意識」という言葉が広まってきた。つまり、トレーシングというかその物の原料がどこからきて、どういう経路で調達され、どう作られたかを気にするようになった。また、その認証団体のロゴも認知され、そのロゴの商品を買うと世の中にいいことをしたつもりになれる。
認証団体が絡んでいても、我々が普段楽しんでいる、コーヒー、カカオ、パソコン、携帯電話などは、多くの犠牲の上に成り立っていることを実例を紹介している。
- ニカラグアのロブスターダイバーの「潜水病」の話。採ったロブスターは、どれがどのように採られたものか区別がつかない。ロブスターの消費量と、フェアトレード会社が正しく採ったと言っている量は、圧倒的に合わない。
- ココアのフェアトレード財団の収入の90%を卸売業者が払い、半分が認証プロセス管理代、残りのほとんどがフェアトレードブランド宣伝代。農家にはほとんど渡らない現実。タンザニアの例では、カカオ農家は1キロあたり1.38ドル。これを倍の値でフェアトレード契約の現地協同組合が買う。私たちが購入するまでに、とてつもない中間管理費がかかっている。
その他、フォックスコムの月給1万5000円の話、ラオスのアヘンの話、コンゴのスズ鉱石、アフガニスタンのヘロイン(世界の90%)、タンザニアのコーヒー(1キロ3.14ドル)、コートジボワールの綿。
大企業も実態を把握せず、手っ取り早い手段で慈善募金で社会貢献をうたったりしているが、その募金の行く先は、現場の人を助けるためではない。(結果的には何も変わらない)また、こういったアンフェアなトレードに異を唱えて叫ぶ人たちも、実際の生活の中では、アンフェアの恩恵を受けている。最終的には、私たち全員が責任を担うことになるという話です。
読んでいくと考えさせられる内容である。こういう本は刺激になります。すぐどうこうできるものではないが、知っているのと知らないのでは全く違うと思います。常識として読むことをお勧めします。