山崎豊子は、社会風俗の作品から始まり、社会問題にテーマを移し晩年を閉じた日本の正統派の小説家の一人であると私は思います。彼女の作品は、本当に面白く、読み始めると止まらない作品ばかりで、また、小説と言えども、徹底的な取材を経て、構想を立てた作品なので、完全に事実ではないとしても世の中の裏にある出来事が見えてくる作品ばかりである。彼女の作品をもっと読みたかったと思います。私が山崎氏の作品で読んだのは以下の通り。
この「約束の海」は、海上自衛隊の潜水艦「くろしお」が、釣り船に東京湾で接触し沈没させ多数の死者を出した。音楽演奏家の頼子との恋が始まり、仕事としても前途有望な二尉、花巻朔太郎が潜水艦の乗務していた。事故をきっかけに国と遺族との裁判が始まり、世の中からの風当たりが厳しくなる。辞職願を出すが、ハワイへの派遣を命じられる。本作品は、ここまで。以降は、山崎氏の構想が紹介されている。実は、花巻の父は、真珠湾攻撃の直前、特殊潜航艇で魚雷攻撃を仕掛けた一人として名を連ねていた、という流れ。読めなくて残念である。
先の既読リストの中で、特に印象が強かったベスト5は、「沈まぬ太陽」「大地の子」「二つの祖国」「不毛地帯」「運命の人」です。