歴史小説を気ままに読んでいるが、好きな作家さんがお亡くなりになり新刊が出ないので非常に寂しい感じである。
山本兼一氏が2014年享年58歳。代表作「利休にたずねよ」「火天の城」もさることながら、すべての作品で非常に視点が独創的で為になる作品です。歴史上の超有名人が主人公ではなくて、その周囲でサポートしてる人物や庶民を主人公にし、彼らの人生観に感嘆するのである。
火坂雅志氏が2015年享年58歳。誕生日は、私と同じである。代表作「天地人」「真田三代」も読んだが、緻密さとダイナニックな描写で、登場人物が間近に居るような錯覚さえ覚える気がする。非常に多くの作品が残されているので、これからも楽しめる。
さて、蓑輪諒氏は、まだ32歳の若き歴史、時代小説作家で、今回読んだ「うつろや軍師」で、2014年作家デビューをしている。若干27歳ということになる。蓑輪氏の作品を見ると、山本兼一氏のように、殿様を陰で支えた人物を扱っているので、山本兼一氏のような視点で楽しむことができる気がする。まだ作品数は少ないので、追いつかないように少しずつ読んでいこうと思う。
「うつろ屋軍師」は、織田信長に仕えた丹羽長秀の軍師、江口正吉、通称三郎右衛門(石見守)を描いた作品である。丹羽家は、地味ながら織田家に欠かせない人物で二番家老となり、本能寺後には、秀吉を支え越前、若狭、加賀、近江123万石を誇る大大名になったが、病没後嫡男長重が弱冠15歳で引き継ぐが、秀吉の策にはまり、丹羽家は15万石まで減らされる。その後、関ヶ原で西軍に組したため改易(家が無くなる)となるが、大坂の陣で少しずつ功績を挙げ、陸奥白河で10万7百石まで大きくすることとなる。
主人公の江口氏は、戦の働きも優秀であるが、「うつろ屋」と丹羽家では言われ、大風呂敷を広げた戦略を立てる人物で、普通誰も思いつかない、あるいは、実行不可能という作戦を立てる。それら作戦を丹羽氏は、取り立てることで、丹羽氏は、大きな成長を上げる。江口氏は、京奉行を務め、小田原城攻略に尽力し、秀吉からも一目を置かれ、秀吉のもとに来ないか誘われる。ところが、江口氏は、丹羽家の殿様が国や人々を大切に思う気持ちを大切にする志に惚れているので、丹羽家に尽くす道を選ぶ。これが秀吉にとって気に入らない1つとなった。丹羽家の家人をそそのかして、減俸にした挙句、あぶれた丹羽家家来をお暇にさせ、のちに大名の位を与えるなどする。(酷いよね)
江口氏は、丹羽家が改易になる関ヶ原でも大谷吉継と策を練り西軍につき、東軍についた前田家(前田利長)を足止めさせる「浅井畷の戦い」を起こす。改易後、家康の次男結城秀康に仕えて貢献する。秀康病没後、丹羽家お家復興のため、集まってきた旧丹羽家の家人と共に、家康側につき、大うつろの策で功績を得て、お家復興を成し遂げた。
この小説は、江口正吉が自分を大切に重用してくれる上司(殿様)のために、全力で自分が信じた策を最後まで諦めず実行する姿勢、決して、私利私欲に流されない姿勢で戦に臨む。失敗しても、上司は最終判断をしたのは自分にあり、決して彼を責めなく、次を期待する。そういう好循環が描かれている。ビジネスの上でも重要な考え方である。
ところで、小説には、大谷吉継は出てくるし、江口氏は石見守になるし、私にゆかりのある言葉が躍っていて非常にワクワクしながら読むことができました。