2030年の世界地図帳(落合陽一)
欧州ベースで作られた新しいルールSDGsと個人情報を守るGDPRに対して、これからの日本の進むべき方向を示唆。
どうしても、落合陽一氏の著書が気になってしまう。この「2030年の世界地図帳」は、2019年11月に初版された最新の本である。内容は、国連のSDGs(Sustainable Development Goals)という欧州連合が中心となって策定した2030年に向けた指針について、落合陽一氏の考察と、安田洋祐氏、池上彰氏、宇賀敬一氏との対談の構成で、今後の日本のあり方、個人としての立ち位置について語っている。
メモしたい事柄が多くて、どう記載しようか悩ましいが、大まかにまとめてみる。が、論理的にまとめられなかったので、是非、「2030年の世界地図帳」を読んで欲しいと思う。
日本は、市場インパクトのあるユニコーン企業が主だった先進国のなかで極めて少ない状況にある。また、人口も少子高齢化社会で、市場規模がどんどん小さくなってきている。
こうした中、今後必要な5つの破壊的テクノロジーとして、以下を挙げている。これらの技術と、SDGsの目標がどう絡んでいくのかの例をいくつか紹介している。
- AIなどの機械学習関連技術領域
- 5G
- 自律走行(自動運転)
- 量子コンピューティング
- ブロックチェーン
次に、GDPは、1993年、G7が約67%を占めていたが、2019年では、約45%までに少なくなり、情報通信技術の発達により企業の多国籍化、サプライチェーンのグローバル化により、新興国の躍進に繋がった。また、ビジネス基盤がハードウェアからソフトウェアに移り変わり中間層が仕事にあぶれ、所得が上がらない構造になってきた。
元々自分の老後のリスク対策であった子供も社会保障制度が充実することで出生率が低下し、子育ては贅沢な消費になってしまった。そのため、高収入でないと子育てができない世の中に世界中が変遷してきている。それが、格差を増大してきている。アフリカなどの新興国も、実は、一部の国、地域を除き貧困問題は解消されてきている。もともと、アフリカは資源に恵まていて豊かな国だったが、西欧列強の搾取や国境を強制的に決めたことや東西冷戦を引き金とした民族紛争が不幸を生んだ。また、資源に恵まれていたため為政者は国内インフラや教育拡充をせずとも莫大な富を得られたので、二次産業、三次産業が育たなかったことが大きな要因となっている。
しかし、近年の携帯電話、スマートフォンの普及で、アフリカは、一気にリバースイノベーションが起きている。電子マネー系では日本より進んでいる地域も多い。また、先進国は、アフリカに対して、「ベース・オブ・ピラミッド」と言われる、小さいパッケージで安くすることでブランドの刷り込みをし、将来の利潤への投資をしている。
二酸化炭素は、産業革命以降、明らかに地球温暖化の原因になっていることが確実視されてきている。このままいくと、2100年には、7度上昇するとも言われている。気候変動枠組条約締約会議COPにおいて、最大のCO2を排出するアメリカは、シェールガスの利用拡大を考えているため、その拡大イノベーションでミニマイズすることを考えて、パリ協定離脱を言っている。中国は、太陽エネルギー利用を推進。それを一帯一路に展開しようと考えている。その他、光触媒技術、人工光合成、次世代資源などの技術が進め垂れているが、まだまだコストが高く普及するのにしばらく時間が掛かる。決定的な施策がないのが現状である。
欧州が積極的に進めている電気自動車もAIやブロックチェーンもパソコンで膨大なエネルギーが必要とされ、一見、CO2に関係ないように見えるが、今後は、電機を生み出す効率化も考えないといけない。
提唱されているSDGsは、地球を1つの生命体で環境、生命間には自己調整システムが存在するの思想の「ガイア仮説」、自然環境は、ある転換点を越えたときに、現在の均衡状態から別の均衡状態へ、急遽かつ不可逆的に移行する「プラネタリー・バウンダリー」をベースに盛り込んでいる。
所有から共有へ、つまり社会や産業のソフトウェア化により電力コストの限界費用ゼロへのデジタルテクノロジーの覇権が今後の重要なカギになる。
欧州で取り決めたGDPR(General Data Protection Regulation)も、アメリカのGAFAM(Google, Amazon, Facebook, Apple, Microsoft)の影響を抑え、欧州の「基本的人権」という長年のカルチャーで「個人データ」の扱いを「法、倫理」で展開するためのルールを制定することで、違反時には、国家予算に匹敵するペナルティが課せられることになった。(2400億円か全世界の売上4%の大きい方)。欧州は、物に対してのブランディングがうまく、貨幣経済などの変動に左右されない資産として持つことを良しとしている。日本も物に対しての品質は良いものがあるが、安く良いもので資産化することに失敗している。むしろ、アメリカ、中国、欧州の中間的な「デジタル発酵」という日本文化とテクノロジーの両輪で付加価値を上げていく試みが日本にとって重要と落合氏は結論付けています。
落合氏が考える「デジタル発酵」の7つ対立軸は以下の通り。
- 原子論的かつ全体論的にある
- 硬直的理想のかく乱者であること
- 公でありつつ私を忘れないこと
- デジタルは完全な世界ではないこと
- 1年後と100年後を同時に考えること
- 支配の構造を脱中心化すること
- 私たちはすべてをできはしないし、しかし何ができるかを考えること
これからのSDGsのルールのもとで、私たち一人一人が常に意識しなければいけない思想である。