NEWTYPE ニュータイプの時代(山口周)


これからの世の中に必要な「ニュータイプ」は、「問題解決」ではなくて理論と直感で「問題設定」ができること。

結構面白い本でした。

従来の優秀な人は、与えられた課題を過去の事例に当てはめて、いかに早く解決するかに精を出す「オールドタイプ」。

これからの優秀な人は、過去のやり方に拘らず常に新しいことを取り入れて、世の中の課題を見つける「ニュータイプ」。

コンサルタントや経済学者は、提案、予測を商売としているが、そこから数年後当たっていることがほとんどない。つまり、彼らは、過去の事例を参考にしているためで、今の変動の大きい世の中に対して適合できていない。そこにお金をかけるのは無駄であり、むしろ、美的意識を常に磨き続け、そこから得られるセンスで、理論と直観のバランスを取りながら難問を切り開くことが今後は大切な行動だとしている。

その「美的意識」は、「望ましい状態と現在の状況が一致していない状況」の差分を問題として意識し、「ありたい姿」を明確に描けること。

1980年代までは、特に日本は、常に世界に目標があり、実際に事例も無数にあり、その差分をそれらの事例を使って埋めていくことで成長することが出来た。ところが、今の世の中、大きな問題は解決され、目標とする国もなくなった。だからこそ、これから求められるのは、希少な問題に気づき、前例に引っ張られず独自な手法で解決していく力であると。

今の世の中よく期待される「イノベーション」は、本来、課題を解決した結果として手段に使うものであり、初めからイノベーションを起こすことを目的としてもイノベーションは起きない。重要な課題は2つある。

1)「イノベーション」に期待される「経済価値スケール」は、初めから確実に見込まれるものはほとんどない。ソニーのウォークマンも当時の営業部長が頑なに製品化を拒んだにもかかわらず実際に市場でイノベーションを起こしたのは有名な話。

2)「方法としての革新性」を期待することは根本的に間違っている。大切なのは、社会に働きかけるのは何らかの本質的な豊かさを生み出したい、あるいは、社会的な課題を解決したいと考えている意義に対して、その目的が達成されればよいのであり、手法・手段は関係がない。

そうした中、日々進化する新しいテクノロジーを用いることで、現在の社会が抱える課題をどのように解決できるかを考えるニュータイプの人は、環境の変化を自らのチャンスに変えていくことで、大きな豊かさを生み出していくのである。

世の中が「相対評価」へと変化しGAFAのような会社が「勝者総取り」をしていくと考えがちだが、市場には、「寡占化が発生しやすい市場」と「寡占化が発生しにくい市場」がある。これらは、「役に立つ・立たない」(機能的便益の有無)の軸と「意味がある・ない」(情緒的便益の有無)の軸のフレームワークで説明できる。GAFAは、「役に立つ・意味がない」の事象になる。「オールドタイプ」の思考様式は、「役に立つ」市場でスケールを考える。(レッドオーシャン)「ニュータイプ」は、「意味ある」市場に絞り独自のポジショニングを取る。(ブルーオーシャン)

また「オールドタイプ」のリーダーは、「WHAT=目的」、「WHY=意義」がなく「HOW=やり方」だけで引っ張っていこうとする。共感を得る「WHAT」と「WHY」がきちんと語られ、「何となく、これはすごい気がする」という直観に導かれて推進する先に世界を変えるような巨大イノベーションが実現できる。

危ないのは「努力すれば夢は叶う」という考え。大切なのは、「努力のレイヤーを上げる」ことを継続すること。ポジショニングを変えていくことの大切さを、ノーベル賞をとった山中伸弥氏(スポーツ整形外科→薬理学→分子生物学)の例で説明。世の中の偉業は、専門家よりも門外漢や熱い思いを持つ人が成し遂げたり、解決方法を示唆することが多々ある。南極点初到達者ロアール・アムンセン、進化論を唱えた地質学者ダーウィン、新幹線時速200キロ以上で脱線しない問題を航空機エンジニアが解決、NASAが35年できなかった太陽フレア発生時放出される太陽からの高エネルギー粒子の予測を無線技士が解いた話などを挙げている。

これから必要な「ニュータイプ」の姿勢は、「とりあえず試して、結果をみて修正する」「早い見極め(撤退)」の繰り返しをすること。そこから得られる「偶然」から新たなビジネスを生み出されること。生きるためには「痛み」は重要、生き延びるために「逃走」も重要である。「どんどん逃げる(Exit)」することで、世の中はどんどん良くなっていく。また、独り占めをせず、「共有」することが中長期的には大きな実りを得ることが分かっている。

「オールドタイプ」は、上司のご機嫌を伺い、しがみついていく、世の中を変えることはできない。自分で課題が見つけられず、上から降りてくる課題を待ち続ける。また自分で得た情報、知識を自分の中だけに留めておくような行動パターンをする。

まとめとしては、リーダーの役割は、「見送っていい常識」と「疑うべき常識」を見極める選球眼を持ち、「問題を設定」をすること。そして、専門領域を自由に横断するための教養を持つために、自分が「わからない」ことを他者に聞く姿勢を持ち、そして「古い学びをリセット」する学習機敏性=ラーニングアジリティを備えることが重要なキーになってくる。

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