静かに興奮した映画だった。内容は、ニール・アームストロングを主人公としたアポロ11号月面の着陸の話である。
監督は、「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル氏。主人公のニールは、これまた「ラ・ラ・ランド」のライアン・ゴズリング氏である。
ニールが、仕事として、月面着陸のプロジェクトであるジェミニ計画、アポロ計画に挑戦している中、訓練自体も常に死と隣り合わせの状態で、実際に、仲間が尊い命を失い、その家族が、父親を失っていくのを目の当たりにする生活。そういう厳しい環境の中で、家族とどう向き合い、試練を乗り越えてきたかという話がうまく演出されている作品でした。特に、幼くして病気で失った娘カレンへの思いを、ニールはめったに表に出さないが、ずっと引きずり月面まで持っていく。そして、カレンのリストバンドを月面に残してくる。
ニールの妻ジャネットを演じるクレア・フォイもいい演技をしている。これからアポロ11号搭乗するために、ニールが時間を掛けて家で荷造りをしているのを見とがめ、「子供たちに何か言うことはないのか」と強く当たります。子供たちも、今晩で、父親に会うのも最期かもしれないので眠れない。ジャネットは、家族4人で話す場を設ける。子供たちが、「月に着いたら何を言うの?」「もう戻れないかもしれないの?」という質問をします。それに、口数少なくニールは答えます。仮に、自分がニールの立場だったら、どういう心境なのだろうと考えると、非常に心打たれます。
ニール・アームストロングは、アポロ11号着陸時、「Houston, Tranquility Base here. The Eagle has landed.」。月面上で、「That’s one small step for [a] man, one giant leap for mankind.」(1969年7月21日)という言葉を残す。
そして、帰還し、妻との対面。すごいプレッシャーの中、やり切った思いと、家族に掛けたプレッシャーに思いを巡らせて、ぐっとくる思いの果てにとった行動は、(演出かもしれないが)わかる気がする。(私はできないが)
こうした複雑な心情の表現だけでなく、宇宙船内での緊張感もビシバシ伝わってくる非常に良い作品でした。
今後の2024年、アポロの双子の女性の名前が冠した女性飛行士の月面着陸アルテミス計画と、その先の火星着陸と宇宙への挑戦に注目です。