人工知能、仮想通貨、ロボット、宇宙開発事業という今まさに注目されている事業を手掛けているメタップス社の佐藤氏から見た、それらの技術の可能性について述べられている。
人間は、課題を解決するテクノロジーを発明する。そのテクノロジーは、時を経るにつれて社会構造に深く組み込まれ、いつしかその存在自体が人間の精神や行動を縛るようになる。そして今、「知性を拡張」したインターネットと様々なデバイスがつながる(IoT)ことで今まで計測できなかったデータの収集が可能になり「意思決定の省略」に向かおうとしている。膨大な情報量「ビッグデータ」を処理するために、ディープラーニングという機械学習の欠点を補う技術が出てきた。これにより、あらゆる物体に「知性」が宿る世界になっていくと予想する。
こうしたテクノロジーは、エントロピーの増大の法則に則って最後に行く着く先の1つは「宇宙」と考えている。
何事もタイミングが重要で、早すぎるとコスト、技術、品質、倫理などの面で社会に受け入れられず、遅すぎると成果はすべて他人に持っていかれる。
これ程長い間、日本国内で「イノベーション」を起こさなければ、と叫ばれているが、アメリカ、中国、イスラエルなどの諸外国に比べるとほどんど起きていない。そこには、「必要性」がないということなのだと言っています。しかし、今の時代当然とされているものを疑うことができる能力は、未来を見通すうえで重要である。現在の国家という概念も、領土、国民、権力から成り立っている。領土は国力だが、広さに縛られない金融、経済の発展がされてきている。国民もインターネットで国家を越えたコミュニケーションが自由にできる。権力は、法律や規制で世の中の流れを遅くすることをするでしょう。
この後、税の元となる通貨発行権も仮想通貨で変わってくること、ロボット化による効率化にともなうベーシック・インカムの導入などが紹介され、ついには、人間の価値観が切り替わるタイミング、それは、技術の実現する利便性が、人々の抱く不安を上回った瞬間に訪れるだろうと予測しています。
専門の領域をベースに書かれているので、うなずけることは多々あるが、どこまでその瞬間が早く来るか、程度がそこまで来ないか、楽しみである。読んでいて楽しい本です。