女神の見えざる手(2017年)
「銃規制強化法」をどんな手段を使っても通しに行く凄腕女性ロビイストの戦い。
18世紀イギリスの哲学者であり経済学者でもあるアダム・スミスが残した有名な言葉、『国富論』 (1776年)「神の見えざる手」とは、『世の中を住みよいものにするためには、一人一人の「正義」や「道徳」が重要である。そういったベースがある中で、政府が正しく公共事業(経済の法的整備、青少年の教育、科学研究の普及、公共娯楽の新興)を提供すれば、おのずと、市場経済システム全体が「神の見えざる手」によってコントロールされる』というもの。
今回は、タイトルが「神」→「女神」にかわり、何か大きな期待感が起きる。
ジェシカ・チャステイン扮するエリザベス・スローンは、眠らないロビイストとして必ず勝つ結果を残すとして業界では高い評価を受けている。そういう彼女に、米国の社会問題である銃規制強化が盛り上がっている中、その規制に反対する団体から、「票を取り込めていない銃社会に厳しい目を向けている女性をまとめて欲しい」という依頼が舞い込む。勝利に導けば大金が会社に入ってくる。ところが、彼女はあっさりと拒否。会社の意に反したため大所帯のロビイスト会社を辞め、別の小さなロビイスト会社に仲間を連れ立ち転職し、「銃規制強化法」を通すために議員の取り込み作戦(ロビーイニング)を始める。銃社会は、非常に大きなお金で動いているので、そのためには、非常に大きなお金が必要。ここをどうクリア―していくかが大きなポイントになってくる。
この映画の面白いところは、彼女が法律、倫理を冒してまで、徹底的に勝ちに行く術を取っていくところで、周囲や世論がついていけなくなってもひたすら突き進み、最後は、考えつくされた最高の激震で、一気に世論を味方につけ勝利を摑む。その勝利とは引き換えに、犯した罪(この「銃規制強化法」を通すためにあえて仕込んだと思われる)で服役5年も受ける。
フィクションとは言え、非常に考えつくされた構成で、最後まで目が離せない作品でした。アメリカの銃社会に大きな風穴を開ける作品として、批判も多くあったらしい。アメリカの憲法制定時は、このように誰もが銃を簡単に入手でき、多くの人命を奪う世の中まで考えていたとは思えなく、その昔の憲法を盾に、自由を主張することは無理があると個人的には思う。銃のビジネスに関わる多くの人がいる、生活がかかっている人、既得権にしがみつく人もいるので、そう簡単に廃止はできないと思うが、一日でも早く銃が無くても平和に暮らせる国に変わっていって欲しいものである。